妖怪キッズ
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小豆洗い(読み方:あずきあらい)の子供向けイラスト

小豆の音がする谷川の夕べ

小豆洗い・あずきあらい
5-10歳向け小豆洗いのお話
壱
はじまり

小豆洗いって?

夕方ゆうがたの商店街しょうてんがいで、りくは小豆あずきを買かいに行いきます。川かわのほうから聞きこえるふしぎな音おとに、耳みみをすませると……。

弐
おはなし

お話

はじまり

秋あきの夕方ゆうがた、空そらはうすいぶどう色いろになり、商店街しょうてんがいのとうふ屋やさんから湯気ゆげがほわりと出でていました。りくはおばあちゃんにたのまれて、和菓子屋わがしやの小豆あずきを買かいに行いくところでした。今夜こんやはおしるこを作つくるのです。

紙袋かみぶくろに入はいった小豆あずきは、手ての中なかでさらさら、こつこつと小ちいさく鳴なりました。りくはその音おとがおもしろくて、歩あるきながらそっとゆすりました。すると、商店街しょうてんがいのはずれ、古ふるい神社じんじゃの裏うらを流ながれる小ちいさな川かわのほうから、別べつの音おとが聞きこえました。

ショキショキ、ザクザク。

まるでだれかが水みずの中なかで豆まめを洗あらっているような音おとです。川かわの水みずは石いしにあたってさらさらと鳴なるはずなのに、その音おとだけははっきり耳みみに残のこりました。

りくは立たち止どまりました。川かわへ下おりる細ほそい道みちには、落おち葉ばがぬれてはりつき、夕方ゆうがたの冷つめたいにおいがしていました。おばあちゃんが前まえに言いっていた話はなしを思おもい出だします。

小豆洗い のシーン 1

水辺みずべで小豆あずきを洗あらう音おとがしたら、のぞきこまないこと。小豆洗あずきあらいは、姿すがたを見みせずに人ひとをふらりと川かわべりへ呼よぶんだよ。

ある日のできごと

りくは帰かえろうと足あしを向むけました。けれど、音おとはまた近ちかくで鳴なりました。

ショキショキ、ザクザク。小豆あずきとごうか、人ひととって食くおか。

歌うたのようでもあり、ひとりごとのようでもありました。りくの背中せなかがすうっと寒さむくなりました。でも、その声こえはこわい大声おおごえではありません。しわがれた小ちいさな声こえで、川かわの底そこからころころ上あがってくるようでした。

神社じんじゃの石垣いしがきの下したで、赤茶あかちゃのものがちらりと動うごきました。りくは一歩いっぽだけ近ちかづき、すぐに止とまりました。川かわへ下おりる道みちは細ほそく、ぬれた落おち葉ばがぴかぴか光ひかっています。足あしを置おけばつるりとすべりそうでした。

また、音おとが止やみました。

りくが息いきをのむと、草くさむらの向むこうで小ちいさな影かげがしゃがんでいました。背せのひくいおじいさんのようで、子こどものようでもあります。古ふるい布ぬのをまとい、丸まるい背中せなかをして、両手りょうてを水みずに入いれています。

その手ての中なかで、小豆あずきが黒くろっぽく光ひかりました。川かわの水みずは月つきの出でる前まえの青あおさで、さわるときっと指ゆびがしびれるほど冷つめたいはずです。

小豆洗い のシーン 2

小ちいさな影かげは顔かおを上あげずに言いいました。

一合いちごう、二合にごう、三合さんごう。米こめならはかれる。豆まめなら数かぞえられる。けれど、子この心こころはいくつじゃろ。

心通うとき

りくはなんと答こたえたらよいかわかりませんでした。こわくて逃にげたい気持きもちがひとつ。ふしぎで見みていたい気持きもちがひとつ。おばあちゃんのおしるこを早はやく食たべたい気持きもちがひとつ。それから、ぬれた道みちに近ちかづいてはいけないと思おもう気持きもちもひとつ。

四よっつ、です。

りくが小ちいさく言いうと、川かわべりの影かげはショキショキと小豆あずきを洗あらいながら、ふふ、と笑わらいました。

四よっつか。正直しょうじきな数かずじゃ。

風かぜが吹ふき、神社じんじゃのいちょうの葉はがからからと鳴なりました。りくの紙袋かみぶくろからも、小豆あずきがこつんと鳴なりました。すると小豆洗あずきあらいは、はじめて顔かおを少すこしだけこちらへ向むけました。目めは細ほそく、しわの間あいだで水みずのように光ひかっていました。こわい顔かおではありません。でも、長ながい長ながい夜よるをたくさん知しっている顔かおでした。

小豆洗い のシーン 3

小豆あずきはよく洗あらえ。石いしをひとつ、虫むしをひとつ、見みのがすな。数かずを大事だいじにする家いえの食たべ物ものは、あたたかい。

そう言いうと、小豆洗あずきあらいは手てを水みずから上あげました。その手てには豆まめが一粒ひとつぶだけのっていました。赤あかくつやつやして、夕焼ゆうやけのしずくのようです。

持もって帰かえれ。けれど、川かわのふちへは来くるな。音おとだけ聞きいて帰かえる子こは、足あしをぬらさずにすむ。

小豆あずきの一粒ひとつぶは、ころんと転ころがって、りくの足あしもとの乾かわいた石いしで止とまりました。りくは川かわへ下おりず、そこから拾ひろいました。指先ゆびさきにのせると、豆まめはふしぎにほんのりあたたかでした。

小豆洗い のシーン 4

ふりかえって

りくがふりむくと、川かわのほうにはもうだれもいませんでした。聞きこえるのは、水みずが石いしをなでるさらさらという音おとだけです。さっきまでのショキショキ、ザクザクは、夜よるの布ぬのにしまわれたみたいに消きえていました。

家いえに帰かえると、おばあちゃんは台所だいどころでなべを用意よういしていました。りくは買かってきた小豆あずきをざるにあけ、そっと水みずをそそぎました。豆まめたちは水みずの中なかでころころゆれ、赤あかや茶色ちゃいろに光ひかりました。

りくはひとつ、ふたつと石いしがまじっていないか見みました。いつもなら急いそいでしまうところを、その日ひだけはゆっくり洗あらいました。指ゆびに当あたる豆まめは小ちいさくてかたく、ざるの中なかでショキショキと鳴なりました。

おばあちゃんが目めを細ほそめました。

いい音おとだねえ。むかしの人ひとは、その音おとを聞きくと、小豆洗あずきあらいを思おもい出だしたんだよ。川かわの暗くらいところへ近ちかづかないための話はなしでもあったのさ。

りくはうなずきました。ポケット[ぽけっと]には、あの一粒ひとつぶが入はいっています。なべの中なかで小豆あずきがことこと煮にえると、部屋へやじゅうに甘あまくて土つちのようなにおいが広ひろがりました。外そとでは神社じんじゃの木きが風かぜに鳴なり、遠とおくの川かわがかすかにこたえました。

おしるこができるころ、りくは小ちいさな器うつわをひとつ窓辺まどべに置おきました。湯気ゆげが白しろくのぼり、あたたかい甘あまさが夜よるへ流ながれていきます。

そのとき、風かぜのすきまからほんの少すこしだけ、ショキショキ、ザクザク、と聞きこえた気きがしました。りくは窓まどを開あけずに、にっこりしました。小豆洗あずきあらいは姿すがたを見みせず、ただ音おとだけを残のこして、谷川たにがわの夜よるへ帰かえっていったのでしょう。

小豆洗い のシーン 5
参
まめちしき

おもしろい豆知識

  1. 小豆洗あずきあらいは、川かわや沢さわで小豆あずきを洗あらう音おとを立たてる妖怪ようかいです。

  2. 近ちかづくと音おとが止やむという話はなしが多おおく、水辺みずべの用心ようじんを伝つたえていました。

  3. 土地とちによって、老人ろうじん、童わらべ、猿さるのような姿すがたなど、いろいろに語かたられます。

  4. 昔むかしの本ほんには、小豆あずきの量りょうをぴたりと言いい当あてる話はなしもあります。

大切なこと

小豆洗あずきあらいの音おとは、こわさだけでなく、耳みみをすます時間じかんもくれます。ふしぎに近ちかづきすぎず、少すこし離はなれて味あじわうと、昔むかしの人ひとの知恵ちえややさしさが見みえてくることがあります。

肆
きをつけて

気をつけること

川辺かわべでショキショキ、ザクザクと豆まめを洗あらう音おとがしても、足元あしもとのぬれた石いしにはのらず、音おとだけをおみやげにしましょう。

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