海坊主うみぼうずと夏なつの夜よるの冒ぼう険けん

はじまり

夏なつの終おわりが近ちかづくある日ひ、海うみの近ちかくの漁村ぎょそんに住すむ健太けんたは、友達ともだちのゆうことたかしと一緒いっしょに海岸かいがんで遊あそんでいました。夕日ゆうひが沈しずむころ、彼らは地元じもとの神社じんじゃで開ひらかれる夏祭なつまつりの話はなしをしていました。「今夜こんやは特とく別べつなことが起おこりそうだね」とゆうこが言いいました。

展開

その夜よる、祭まつりは賑にぎやかに始はじまりました。たくさんの屋台やたいが並ならび、子供こどもたちは金魚きんぎょすくいや花火はなびに夢中むちゅうでした。しかし、突然とつぜん、風かぜが強つよくなり、空そらに雲くもが広ひろがり始はじめました。「嵐あらしが来くるかも」と大人おとなたちは囁ささやきました。

その時とき、健太けんたと友達ともだちは海うみの方ほうを見みて、巨大きょだいな黒くろい影かげが海面かいめんに浮うかんでいるのを発見はっけんしました。「あれは何なんだろう？」と健太けんたが言いいました。「海坊主うみぼうずかも」とたかしが怖こわそうに答こたえました。

クライマックス

健太けんたたちは、海坊主うみぼうずが本当ほんとうに現あらわれたのかを確たしかめるため、浜辺はまべへ向むかいました。そこには大おおきな禿はげた頭あたまが波なみの上うえに見みえていました。「どうしよう？」とゆうこが言いい、たかしは「知恵ちえを使つかわないと」と声こえを低ひくくして言いいました。

そこで、健太けんたはお祭まつりの屋台やたいで手てに入いれた大おおきな紙かみの皿さらを使つかって、海坊主うみぼうずに向むかって「これで酒さけを注ついであげる」と叫さけびました。その瞬間しゅんかん、海坊主うみぼうずは興味きょうみを引ひかれ、近ちかづいて来きました。しかし、紙かみの皿さらは水みずがこぼれるように底そこが抜ぬけていて、海坊主うみぼうずはそれを見みて困こまったように姿すがたを消けしました。

結末

祭まつりの夜よるが再ふたたび静しずかになり、嵐あらしも過すぎ去さりました。健太けんたと友達ともだちは安あん全ぜんな帰路きろにつき、海坊主うみぼうずが消きえたことに安堵あんどしました。「ぼくたちの知恵ちえが役やくに立たったね」とたかしが笑わらいました。それ以来いらい、健太けんたたちの漁村ぎょそんでは、海坊主うみぼうずの話はなしが語かたり継つがれるようになりました。