妖怪キッズ
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座敷童子(読み方:ざしきわらし)の子供向けイラスト

ざしきわらしと古い客間の音

座敷童子・ざしきわらし
5-10歳向け座敷童子のお話
壱
はじまり

座敷童子って?

冬ふゆの岩手いわてへ来きた小学生しょうがくせいのまことは、古ふるい旅館りょかんで小ちいさな足音あしおとを聞ききます。畳たたみの匂においと湯ゆけむりの中なかで出会であう、やさしい妖怪ようかいの物語ものがたりです。

弐
おはなし

お話

はじまり

まことは冬休ふゆやすみに、家族かぞくと岩手県いわてけんの古ふるい温泉おんせん旅館りょかんへ行いきました。駅えきを出でると、空気くうきはきんと冷つめたく、息いきが白しろい雲くもになりました。道みちの両側りょうがわには雪ゆきがふんわり積つもり、長靴ながぐつで踏ふむときゅっ、きゅっと小ちいさな音おとがしました。

旅館りょかんは木きの柱はしらが黒くろく光ひかる、昔むかしからの建物たてものでした。玄関げんかんには炭すみの匂においが少すこし混まじり、奥おくから温泉おんせんの湯ゆけむりの匂においが流ながれてきます。女将おかみさんはにこにこして、「この家いえには古ふるいお座敷ざしきがありますよ」と言いいました。

座敷童子 のシーン 1

通とおされた部屋へやは、青あおい縁へりの畳たたみが広ひろがる客間きゃくまでした。床とこの間まには南天なんてんの赤あかい実みが飾かざられ、障子しょうじの向むこうでは雪ゆきがしんしんと降ふっていました。まことが畳たたみに手てをつくと、ひんやりして、でもどこかやわらかい感かんじがしました。

夕食ゆうしょくの前まえ、まことは部屋へやのすみでこまを回まわしました。学校がっこうの昔むかし遊あそびの時間じかんに習ならったばかりです。こまはぶうんと低ひくく鳴なり、畳たたみの上うえを小ちいさく踊おどりました。その時とき、廊下ろうかの奥おくから、たたた、と子こどもの走はしる足音あしおとが聞きこえました。

座敷童子 のシーン 2

ある日のできごと

まことは顔かおを上あげました。お父とうさんもお母かあさんも荷物にもつを片かたづけています。妹いもうとはもう浴衣ゆかたの帯おびを結むすんでもらっているところでした。だから、廊下ろうかを走はしった子こはだれでもありません。

また、たたた。今度こんどは天井てんじょうの上うえを小ちいさな足あしが通とおるような音おとです。つづいて、ころん、と何なにかが転ころがる音おと。まことのこまが勝手かってに動うごいたのかと思おもいましたが、こまは手てのそばに静しずかに倒たおれていました。

「古ふるい旅館りょかんだから、音おとがよく響ひびくのよ」とお母かあさんは笑わらいました。でもまことは、音おとの中なかにくすくす笑わらう声こえが混まじっていた気きがしました。夕食ゆうしょくには焼やき魚ざかなと熱あつい汁しる、山菜さんさいの小鉢こばちが並ならびました。湯気ゆげの向むこうで家族かぞくの声こえがまるく聞きこえ、外そとの風かぜの音おともこわくありませんでした。

食事しょくじのあと、まことは一人ひとりで客間きゃくまに戻もどりました。障子しょうじの雪明ゆきあかりで部屋へやはうすい青あおに見みえます。ふと、畳たたみの真まん中なかに小ちいさな影かげが座すわっていました。前髪まえがみが額ひたいにかかり、ほっぺたはりんごのように赤あかい子こどもです。古ふるい絣かすりのような着物きものを着きて、まことのこまを指ゆびでちょんとつついていました。

座敷童子 のシーン 3

心こころ通かようとき

まことは息いきをのみました。でも、その子この目めはいたずらっぽく、こわい光ひかりではありません。「きみ、だれ」と小ちいさな声こえで聞きくと、その子こは首くびをかしげました。答こたえの代かわりに、こまのひもをすうっと巻まき、ひょいと投なげます。こまはまことが回まわすよりずっと長ながく、まるで畳たたみの目めを読よむように静しずかに回まわりました。

座敷童子 のシーン 4

「すごい」とまことが言いうと、その子こは歯はを見みせずににこっと笑わらいました。廊下ろうかから女将おかみさんの足音あしおとが近ちかづくと、子こどもの姿すがたは障子しょうじの白しろさに溶とけるように消きえました。まことは思おもわずこまを抱だきしめました。

女将おかみさんはお茶ちゃを持もって来きて、「あら、こまが上手じょうずに回まわった音おとがしたね」と言いいました。まことがさっきの子このことを話はなすと、女将おかみさんは少すこし声こえを低ひくくして、「それは座敷童子ざしきわらしかもしれません」と言いいました。

座敷童子ざしきわらしは、東北とうほくの古ふるい家屋かおくに住すむと伝つたわる妖怪ようかいです。赤あかい顔かおをした童子どうじの姿すがたで、お座敷ざしきや客間きゃくまに現あらわれることがあります。走はしる音おとや笑わらい声ごえだけが聞きこえることもあるそうです。人ひとを困こまらせるためではなく、その家いえを見守みまもるようにいると信しんじられてきました。

「座敷童子ざしきわらしを見みた家いえには幸さいわいが来くる、と昔むかしから言いいます。でも大切たいせつなのは、見みたことを自慢じまんすることではないの。家いえを明あかるくして、食卓しょくたくをにぎやかにして、畳たたみをていねいに使つかう。そういう気持きもちが好すきなのかもしれないね」

その夜よる、まことはふとんの中なかで耳みみをすませました。すると枕元まくらもとで、こまがほんの少すこしころりと鳴なりました。障子しょうじの向むこうに小ちいさな影かげが座すわり、雪ゆきを見みているようでした。

座敷童子 のシーン 5

ふりかえって

朝あさになると、雪ゆきはやみ、庭にわの木きの枝えだから光ひかりがぽたぽた落おちるようでした。まことのこまには、赤あかい糸いとがひと巻まき結むすばれていました。だれの糸いとかはわかりません。さわると少すこしあたたかく、古ふるい布ぬのの匂においがしました。

朝食ちょうしょくの食堂しょくどうでは、旅館りょかんの人ひとたちが忙いそがしそうに動うごいていました。ごはんの湯気ゆげ、味噌汁みそしるの香かおり、茶碗ちゃわんの触ふれ合あう音おと。まことはいつもよりゆっくり手てを合あわせました。妹いもうとが笑わらうと、どこかで同おなじくらい小ちいさな笑わらい声ごえがした気きがしました。

帰かえる時とき、女将おかみさんは玄関げんかんでまことに言いいました。「この家いえでは、夜よるに子こどもの足音あしおとがすることがあるの。金田一きんたいちのあたりにも、座敷童子ざしきわらしの話はなしはたくさん残のこっています。会あえた人ひとは、そっと胸むねにしまうのがいいね」

まことはうなずきました。旅館りょかんの屋根やねから雪ゆきがざざっと落おち、庭にわの石灯籠いしどうろうに朝あさの光ひかりが当あたりました。車くるまに乗のる前まえ、まことは客間きゃくまの方ほうを見みました。障子しょうじのすきまに、赤あかいほっぺの影かげがほんの一瞬いっしゅん、見みえたような気きがしました。

座敷童子 のシーン 6

それから家いえに帰かえっても、まことは食卓しょくたくであった出来事できごとをよく話はなすようになりました。学校がっこうでこまを回まわす時ときも、畳たたみの部屋へやを使つかう時ときも、どこかに小ちいさな友ともだちが座すわって見みている気きがします。座敷童子ざしきわらしはもう姿すがたを見みせません。でも、古ふるい家いえのあたたかさと、だれかがそっと見守みまもる気配けはいは、赤あかい糸いとのようにまことの心こころに残のこりました。

参
まめちしき

おもしろい豆知識

  1. 座敷童子ざしきわらしは岩手県いわてけんや青森県あおもりけんの民間伝承みんかんでんしょうに多おおく登場とうじょうします。

  2. 姿すがたを見みせず、夜よるの足音あしおとや笑わらい声ごえだけで気配けはいを知しる話はなしもあります。

  3. 座敷童子ざしきわらしがいる家いえは栄さかえると信しんじられ、去さると衰おとろえるとも語かたられました。

  4. 男おとこの子こや女おんなの子こ、着物きものの色いろなど、姿すがたの伝つたわり方かたは地域ちいきで少すこし違ちがいます。

大切なこと

古ふるい部屋へやの音おとや家族かぞくの笑わらい声ごえには、目めに見みえないぬくもりが宿やどることがあります。座敷童子ざしきわらしのような気配けはいを思おもうと、毎日まいにちの食卓しょくたくや畳たたみの手てざわりも、少すこし大切たいせつに感かんじられます。

肆
きをつけて

気をつけること

座敷ざしきで小ちいさな足音あしおとを聞きいても、急いそいで追おいかけないで。畳たたみに手てをそっと置おき、「ここにいるのかな」と心こころで聞きくくらいがちょうどいいのです。

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